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大人への階段

 なにげなく手にとった児童書『わたしはなんでも知っている』を一気読みしました。一気読みというほど読みでのある本でもないのですが。

 主人公のクス子は小学4年生。新聞も読んでるし、父親が開業医なので待合室でしょっちゅう大人の噂話も聞いているし ちょっとした物知りだと自分では思っています。ある日、クス子は公園でふしぎなおじいさんと出会い、今まで知らなかったことがどんどんわかる薬をもらいました。それを飲んだ翌日、たしかにその薬には効果があったのですが、わかるのは知りたくなかったことばかりで……。

 表紙は『一期一会』のカタノトモコさんの絵でとてもかわいいのですが、中味はホロ苦系でした。4年生くらいって、そろそろ「本音と建前」とか「嘘も方便」とかを学ぶ時期なのかな。読みやすかったし、きれいごとばかりでないところが気に入りました。解決策は、えっこれでいいの? と思ってしまったけれど、そういうものを受け入れていくのが大人への第一歩なのかもしれません。

うまいと好きは別でした

 春の新しい人探しで選んだ何人かの最後のひとりが沼田まほかるです。デビュー作の『九月が永遠に続けば』を読みました。この作品でホラーサスペンス大賞を受賞したと帯にあり、ホラーの苦手な私はおっかなびっくり手にとったのですが……いやあ、上手でした。冒頭、夜にごみを捨てに行った息子がそのままいつまでも帰ってこない――という設定にぐいっと掴まれ、ページがどんどん進みます。前夫の家族と幾重にも複雑に絡みあっていることが次第に明らかになるのですが、無理なくわかりやすく説明されていました。

 ただ読み終えてみて、好きな話かと問われると首を振ってしまいます。精神異常や形容しがたい魅力というものとあまり縁がなく、かつ関わりたくないということもあるけれど、一番いやだったのは、近所のやもめ、関西弁でどんどんはいりこんでくるダディでした。この人、すごく気持ち悪いです。また便利だからという理由で好意にどこまでも甘える主人公も理解不能です。登場人物にここまで嫌悪感を覚えるのも、作者の描写が上手な証拠なのでしょうけれど。

 「いつかまた読んでしまうかもしれない」グループに入れました。

 

素晴らしい通訳

 ひさしぶりの酒井順子さん。『こんなの、はじめて?』は週刊現代に連載されたエッセイをまとめたもので、これが第5弾になります。先日「恋人たちの予感」をDVDで観て、男女の意識の差ってほんとに大きいんだなあと思っていたところだったので、女性にとっては常識なのに男性が知らないことを見抜いて伝える酒井さんの見事な通訳ぶりに感嘆しました。

 この連載エッセイ、女性には別に目新しいことでもないのに男性にとっては新鮮なのかなあと疑問符を持ちながら読んでいた時期もあったのですが、今回はそこに目をつけるのかとか、あれとこれを結び合わせてこんな風に持っていくのかとか、上手だなあと思うばかりでした。文体も以前よりスッキリしてきたような気がします。そんなふうに感じるのは酒井さんの芸に磨きがかかってきたからなのか、それとも私がものごとを考えなくなってしまったからなのか、後者なら少しがんばらねば、ですね。

濃ゆっ

 新しい人探しで選んだ『盤上のアルファ』を読了。一度は奨励会を退会したアマチュア棋士の真田が再びプロを目指す話でした。これを文化部に左遷された地方紙の新聞記者、秋葉と絡めて描いています。著者のデビュー作で、小説現代長編新人賞を満票で受賞した作品だそうです。兵庫県出身で神戸新聞社に勤務していた著者の略歴を見ると、手堅いスタートだと思います。

 主役の二人、真田と秋葉がとにかく強烈です。周囲が見えず人から嫌われる似たもの同士といっていいでしょう。真田を強烈な人格にしたためそれに対抗するには秋葉くらいでないとダメだと思ったのかな。ひとことでいうと「濃ゆっ」って感じ? (無理して使ってみたけど「濃ゆい」ってどこの地方の言葉なの?)疲れます。

 読書メーターの評判もいいし、よく描けているとは思うのだけど、わたしは苦手でした。生粋の関東人なので関西弁にも関西の風土にも馴染めなかったのです。真田と小料理屋の静が秋葉にしたことは、わたしからすると犯罪行為に等しいぐらいひどいことなのですが、関西では、これでもしょうがないやっちゃなあと許せる範疇にはいるのでしょうか? ようわからん。

 「たぶんもう読まない」グループに入れました。

こどもの本を考える(2)

 「こどもの本について考えよう」をテーマにした読書の2冊目は『子どもの本の書き手たち』にしました。34人の児童文学作家のインタビュー集です。

 装丁が美しかったので手に取ったのですが、奥付を見ると1999年、10年以上まえの発行なのでした。そのため多くは、今や学校図書館では借りられない本の書き手たち。児童書は寿命が長いといわれていますが、それは親が選んで子に与えるからであって、こどもに選ばせると本当にシビアなんですよね。そしてこどもの気持ちに寄りそってこのインタビュー集を読むと、この人おもしろい、だからこどもにも紹介したいと思える人はひとりもいませんでした。

 でもねえ、これ、たぶん作家というよりインタビューをまとめた人の問題のような気がするんです。大人向けの本に書かれた「まあるいお顔から、ほっくりとした笑顔がこぼれる」という文章に抵抗のない読者は、この本も素直に読めるかもしれません。わたしはこっぱずかしくて、蕁麻疹が出そうでした。直接お話ししたら、もっとおもしろい話が聞けそうな作家さんもいるのになあ。

苦手要素、てんこもり

 新しい人探しの一環で真梨幸子の『女ともだち』を読みました。いやーん、グロかった。書店で文庫が平積みになっていたのですが「これがドロドロ3部作のはじまりです」(ウロ覚え)みたいに書いてあって、これを先に知っていれば読まなかったんだけど、後の祭りです。

 郊外の高層マンションで連続して起きたふたつの殺人事件の真相を、フリーランスのルポライターを通して描いた話なのですが、殺人事件もグロかったし、女同士の人間関係もぐちゃぐちゃだし、最後はサイコっぽくなっていて、わたしの苦手要素満載でした。これが3作目だからか、作品の構成もわかりにくかったです。後で読み返すことを想定して組み立てられたようなのだけど、読み返したくなるほどのめりこめなかったのでした。

 書店で平積みになっているくらいなので、こういうジャンルが好きな人もたくさんいるのでしょうね。ごめんなさい、わたしはもういいです。

絵本の日 2012

 年に1度の絵本の日。今年は『パパのしごとはわるものです』『だーれだ?』『ぼくのおふろ』『これもむしぜんぶむし』『なぞなぞのみせ』『どこいったん』『シンデレラ』『わたしのひかり』『うまれてきてくれてありがとう』などを読みました。

 いちばん気に入ったのは『パパのしごとはわるものです』でした。わからないけどわかったことにする親子がとてもよかった。こどもって、幼くても親の気持ちを傷つけないように考えてるんですよね。忘れていた気持ちを思い出させてもらいました。

 びっくりしたのは『シンデレラ』。那須田淳訳の版なのですが、魔法つかいのおばあさんもガラスの靴も出てこないシンデレラは初めて読みました。これがグリム兄弟の元版なんでしょうか?

 こどもが大きくなって絵本を手にする機会も減ってしまいましたが、毎年この日がくると、今年はもっと読もうと思うのでした。

39歳の心もよう

 お出かけのときに『世界音痴』と一緒に持って行った益田ミリの『前進する日もしない日も』は、帰りの電車の中で読みはじめて、その日の夜にベッドで読み終えました。こちらは2007年から2008年にかけて書かれたエッセイなのですが、作者は『世界音痴』と同じ39歳でした。時空を超えた同じ年齢のふたり。これもまた不思議な感じです。

 益田ミリは「あるある感」を上手に掬う人だとかねてから思っているのですが、強烈な穂村弘のあとでは、その「あるある感」は残念ながら色褪せてしまいました。穂村弘は人には言えない「あるある感」をさらしているように見えるのだけど、益田ミリは人に見せてもいい部分しかさらさないからです。別に何もかもさらす必要はないのだけど、文章としてはさらしてくれるほうがおもしろいのは仕方ないですよね。とはいえ穂村弘のそれは多分に妄想(フィクション)がはいっていて本当のところは何もわからないのだけどね。

タイムマシンに乗って

 今年のGWは映画とドラマに終始してしまい、本はあまり読めませんでした。ようやく晴れた日に電車に乗って外出したので、『世界音痴』を読み終えました。穂村弘の初エッセイ集。2002年の穂村さんは39歳独身で、ずっとこのまま独り身なのだろうと思っているのですね。以前に奥様とふたり暮らしというエッセイ集を読んでいたので、タイムマシンをさかのぼっているような感覚を覚えました。そして2002年の穂村さんもやっぱりヘンでおもしろくて鋭い人でした。

 もしもこんな人が同じクラスにいたらきっと近づけなくて、でもこんなことを考えていたと知っていたら絶対に興味津々だったろうな。だけど穂村くん(同じクラスだから)は、そんな心のうちを見せることなく卒業しちゃって、結局、やっぱりどこにも接点はない。そして何年も経ってから、穂村ってあのXXくんのペンネームなんだって??と友だちと噂していたような気がします。そう、穂村弘がペンネームだということも今回初めて知ったのでした。エッセイの影響で妄想してみたのだけど、凡人の妄想ってやっぱり平凡ですね。

読んでよかった!

 マンガはお休み――なんて言ってしまったのに、書店で『坂道のアポロン』9巻を見かけたので夏まで待てなくて買ってしまいました。本編の最終巻とあったので、つい。千太郎が消えてしまって、いったいこれでどうやって終わらせるんだろうと思っていたのですが、作者は本当に素敵なエンディングを用意してくれていました。読んでよかった! このあとも番外編は読めるようなので、楽しみにしています。

 そういえば今週号の週刊文春に大人におすすめのマンガ、ベスト10が掲載されていました。ベスト3はわたしのお気に入りばかりで、この作品もベスト10にはいっていました。うれしいです。

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