2009.07.09

心地よい時間と大いなる錯覚

 あいだに別の本を入れるつもりだったのだけど、結局『1Q84』を読み終えてしまいました。作者得意の比喩がおもしろく、文体が心地よく、最後は降りた電車のホームで読了。ストーリーは――うーん、どうなんだろう、正直にいうと、これだけ売れるのが不思議の(よい意味での)まとまりのなさを感じました。
 英米の原書を読んでいて、圧倒的なうねりを感じながら物語の小さなほつれがあちこちにあって、訳書を出しましょうと強力にプッシュできないことがあります。わたしとしてはミステリじゃないんだから、すべての手がかりに意味がなくてもいいじゃん、と思いもするのだけど、たぶん日本の読者には整合性のないものは受け入れられないだろうなとも想像するわけです。だからもしも物語としての『1Q84』がこれだけ広く受け入れられるのなら、あの本もこの本も全然OKじゃんみたいな錯覚を起こしそうになります。これは社会現象で村上春樹というブランドだから特別で、多くの人はファッションで購入しているんだろうなあ(だから2匹目のどじょうはない)とはわかっているつもりなのだけれど。

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2009.07.05

途中経過

 話題の『1Q84』を読んでます。今日ようやく BOOK1 を読み終えました。ウルトラマラソンを走る作者なので、出てくる人出てくる人みんなストイックでかっこよく、自堕落な自分がとことん恥ずかしくなります。大きなうねりを見せている物語についての感想は、BOOK2 を読み終えてから書くとして、いつもの楽しい比喩と、現実よりもかなり湿度の低い世界を今のところは楽しんでいます。さて、明日から続きを読もうっと。

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2009.07.02

コピーの力

 「今月の『ミステリ十二か月』から」(しつこい!)は『シンデレラの罠』。「私はその事件の探偵で証人で被害者で犯人なのです」のコピーにはさすがに惹かれます。1960年代前半に書かれたフランスミステリなのですが奥付を見るとなんと46版! 読後の感想はといえば、この版数はコピーのチカラに違いない……でした。北村先生の紹介には「とらえ所のない不安感」とか「濃い霧の中を進むような印象」とあり、たしかにそのとおりだったのですが、その過半は迷翻訳にあるような(ごめんなさい!) フランス語が読めたらなあと痛切に思う1冊でした。

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2009.06.28

求むサザエさん化

 池袋WGPシリーズ第8弾『非正規レジスタンス』をようやく読みました。相変わらず甘ちゃんなマコトは危ういバランスの上で魅力をふりまいてるし、ミニバブルのころの都市開発とか派遣切りとか世相を反映させるのもうまいです。ただ4つしか話がはいってないのに、半分がセレブのカネの亡者&社会の建て直しを図る二代目という図式なのはちょっとどうかなって感じはしましたけど。このシリーズもマコトが全然年を重ねないまま、時代だけが変わっていくサザエさんのようにどこまでも続くんでしょうか。こうなったらどこまでいくのか見守りたいと思います。

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2009.06.26

古いけど古くない

 江戸川乱歩先生編の『世界短編傑作集1』を読みました。この短編ミステリ傑作集は5巻まであるのだけど、とりあえず1冊読めばいいかなと思って開いたら、年代順に並んでいるとのこと。第1巻は19世紀から20世紀はじめまででした。歴史書を読み解くような気分で読みはじめのだけど、さすがは傑作集、どれもおもしろいです! またトリックだけを知っていた話をちゃんと読んだり、名前だけを知っていた「隅の老人」の活躍ぶりを知ったりと、自分の中で点としてあったものが、広がっていく楽しみもありました。あと4冊、気長に読むことにします。

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2009.06.25

人はみな変わるものだけど

 森絵都はここのところ新作が出るたびにうーんちょっと違うという気持ちが拭えず、今回の『架空の球を追う』も手にとるまで時間がかかってしまいました。結論から先にいうと、やっぱり違う……のでした。すごくうまいと思うんだけど、シニカルな視線の鋭さにも感嘆してはいるのだけど、でも、児童書のときの誰にもまねできないひんやりした温かさを求めちゃう。児童書を知らなければ素直に好きな作家だったかもしれません。昨日の続きでいえば、アーティストの新しいスタイルについていけない顧客の状態なのかも。

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2009.06.24

スタイルを守る勇気

 『フレンズ・ツリー』は『トラベリング・パンツ』のアン・ブラッシェアーズの最新作(たぶん)。今回はもうすぐ高校入学という3人の女の子の友情物語です。トラベリング・パンツの4人と同じ町の子たちで、ところどころに4人の名前も出てくる姉妹編といった趣でした。
 主人公のひとりの母親は彫刻家なのですが、ひとつのスタイルで有名になると違うものを作りたくても顧客はそれを望まないというジレンマに悩まされています。なんとなく作者の姿と重なってしまいました。この作品も二番煎じといわれても仕方のないものですが、それでもトップランナーの風格が漂っています。新鮮味はないけど安心して読める1冊ではありました。

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2009.06.23

師弟は対決しないのね

 去年読み残していた「しゃばけ」シリーズの(今のところ)最新刊『いっちばん』を読みました。しばらく離れていると無理して読まなくてもいいかなという気になっていたのだけど、一度ページを開くと懐かしさにぐいぐい引きこまれていきますね。『ちみどろ砂絵』を読んだばかりだったので、アプローチは違うけれど江戸の町を活写している点で、畠中さんの師匠を継承していこうという心意気も感じて、今までよりもさらに楽しく読めた気がします。

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2009.06.22

人のふりみて

 「ROOKIES」も「クローズZERO」も見ていないのだけど、たまたま手元にきてしまったので、高岡蒼甫の『はじめまして、こんにちは。』を読んでしまいました。正直に(言えることは)言った、というのだけが取り得といえるのかな。ロールモデルのいないグレた子には、なにかしら得るところがあるかもしれません。27歳にしては考え方が幼いような気もしましたが、自分も27歳のころはこんなだったのかなあ。こんなだったのかも。今だって、自分のことを書こうとしたらたいしたことは書けない気がしてきました……人のふりみてる場合じゃなかったか。

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2009.06.21

教えてくれてありがとう

 知り合いの中学生に「乙一の『F先生のポケット』」が読みたい」と熱心に言われ、しかし注文しようとしてもそんな本はないのです。結局調べているうちに雑誌に掲載されたもので、単行本に所収されてないということがわかったのですが、そのポケットの解説をネットで読んで、今度はわたしのほうが読みたくなってしまい、図書館から相互貸借までして取り寄せてもらっちゃいました。
 あの有名なF先生のポケットが、みごとに乙一テイストに料理されてました。主人公の切れ味鋭いセリフも気持ちよくて、こういうのを読むと、こどもがラノベにハマるのに素直に納得です。イラスト含め楽屋オチっぽいところもあるので、単行本に入れるのがむずかしいのかな。でもこのままにしておくのは惜しいと思いました。

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