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July 2009

節度のある関係

 旧訳とはずいぶん違うという噂を聞いて『ビーバー族のしるし』を読みました。旧訳も読んでいたはずなんだけど、新訳を読んでみて、旧訳はおろか物語を全然覚えていなかったことに気づいたのでした。あはは。というわけで、新鮮におもしろく読みました。ひとことでいえばインディアンと開拓民の少年の交流物語なんだけど、へんにべたついたところがなく現実を踏まえた節度があるところがいいです。ただ、いい本だとは思うんだけど、あまりにも現在の日本の状況とはかけ離れているので、なかなかこどもに薦めるのはむずかしいかも。本の好きなこどもでないと、ちょっとハードルは高いです。

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まだだいじょうぶ

 評判のよい本を読んで、おもしろく思えない――ということはしばしばあるのだけど、そんなことが続くと、本を楽しめないのは自分の感受性に問題があるのかなあ、本ではなく自分のほうに問題があるのではとだんだんブルーになってきます。そんな気持ちもこれなら治るかも……と、三谷幸喜の『ありふれた生活』を読みました。あー、やっぱり三谷さん、そして三谷夫婦、いいわあ。全篇読みながらニコニコしてたのだけど、カールスモーキーに対抗してメイクをするくだりではついにふきだしてしまいました。これをおもしろく思えるわたしはまだだいじょうぶ、という気になれました。三谷さん、ありがとう! 
 あと、劇評に関するエッセイは激しく共感です(自分も書かれる身なので)。この日記は勝手に書き散らかしているだけなので、関係者の方が見る確率は極めて低いと思っているのだけど、たまたま私と合わない本の関係者の方のお目に留まってしまったらゴメンナサイ! きっとほかの方がその本を愛してくれていると思います……。

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もうちょっと他人のことを考えたらどうでしょう?

 夏休みの課題図書をようやく1冊読み終えました。『フレンズ・ツリー』が『トラベリング・パンツ』の妹篇なら、この『ラストサマー』はお姉さん篇とでもいえるかもしれません。別荘族(死語?)の隣人同士で幼馴染みのポール、ライリー、アリスの物語です。ライリーと同い年のポールが24歳、アリスはライリーの妹という設定なのだけど、3人とも精神構造がいかにも幼いのに驚きました。自分が24歳のときのことをまったく忘れているのにも問題がありといえそうですが、それにしても……三人三様に自分のことばかりで、疲れました。姉が難病にかかり明日をも知れない状態にあるから、妹はキャリアを一時的に凍結するとか、300万ドルをポンと寄附しちゃうボンボンとか、遠い世界の話だから、心の動きも遠い世界のことのように思えるのかなあ。わたしには、どうにもしっくりこない物語でした。

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トリビアな知識がちょっと増える1冊

 世間的には夏休み。今年は夏休みの課題図書を6冊積んでいて、今、シチュエーションごとに4冊を並行に読んでいるんだけど(旅行用、電車の中用、就寝前用など)、頭の中も夏休みになっちゃったのか、全然読み進められないのでした(涙)。そんななか、なぜかふと手に取ってしまった人気の『日本人の知らない日本語』。流行のコミックエッセイに仕立てたところがミソで、新書だったらこれほどには人気は出なかったことでしょう。あっというまに読めて中身は詰まっているとは言いがたいけれど、豆知識が増えてちょっと楽しい。無意識につかっている日本語、翻訳とはまた違った意味で奥が深いです……。

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疲れた……

 人に薦められていた『川は静かに流れ』を読みました。うーん、ここまで合わないのはひさしぶり。翻訳の文章が合わずに途中で何度も挫折しそうになり、この分厚さをスイスイ読める英語力があれば絶対原文で読んでるのになあと思っていたのですが、最後の50頁を読むに至って、いや、原文でも二度と読みたくないわ、と思い直しました。わたしにとって魅力的な登場人物がひとりもいないというのが致命的ですが、後味もすこぶる悪く、ミステリだと思って読んでたので探偵役の主人公がバカすぎていらいらしっぱなしで……期待しすぎだったのかも。表紙すてきだし。解説を読み、最初から家族小説として読めば少しは不快感が消えたのかも……と、ちょっと反省しました。実際、巷には激賞の書評もたくさんあるので、読む人が読めばきっとおもしろいんだと思います。でも最初から読み直す気力はないわ……。ふぅ。

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粒揃い、ごちそうさま

 少しあいだがあきましたが、『世界傑作短編集2』を読み終えました。この本には1907年から1923年までの9編が収録されています。傑作というだけあって粒揃い。モーリス・ルブランのスピード感、フリーマンの緻密な分析、コール夫妻のびっくりのトリックなどなど、語り口に古さはあるもののどれも楽しめました。こどものころに大好きだったルパンがやっぱり楽しかったなあと思うわたしは、本格好きというよりエンタメ命なのかもしれません。

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心地よい時間と大いなる錯覚

 あいだに別の本を入れるつもりだったのだけど、結局『1Q84』を読み終えてしまいました。作者得意の比喩がおもしろく、文体が心地よく、最後は降りた電車のホームで読了。ストーリーは――うーん、どうなんだろう、正直にいうと、これだけ売れるのが不思議の(よい意味での)まとまりのなさを感じました。
 英米の原書を読んでいて、圧倒的なうねりを感じながら物語の小さなほつれがあちこちにあって、訳書を出しましょうと強力にプッシュできないことがあります。わたしとしてはミステリじゃないんだから、すべての手がかりに意味がなくてもいいじゃん、と思いもするのだけど、たぶん日本の読者には整合性のないものは受け入れられないだろうなとも想像するわけです。だからもしも物語としての『1Q84』がこれだけ広く受け入れられるのなら、あの本もこの本も全然OKじゃんみたいな錯覚を起こしそうになります。これは社会現象で村上春樹というブランドだから特別で、多くの人はファッションで購入しているんだろうなあ(だから2匹目のどじょうはない)とはわかっているつもりなのだけれど。

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途中経過

 話題の『1Q84』を読んでます。今日ようやく BOOK1 を読み終えました。ウルトラマラソンを走る作者なので、出てくる人出てくる人みんなストイックでかっこよく、自堕落な自分がとことん恥ずかしくなります。大きなうねりを見せている物語についての感想は、BOOK2 を読み終えてから書くとして、いつもの楽しい比喩と、現実よりもかなり湿度の低い世界を今のところは楽しんでいます。さて、明日から続きを読もうっと。

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コピーの力

 「今月の『ミステリ十二か月』から」(しつこい!)は『シンデレラの罠』。「私はその事件の探偵で証人で被害者で犯人なのです」のコピーにはさすがに惹かれます。1960年代前半に書かれたフランスミステリなのですが奥付を見るとなんと46版! 読後の感想はといえば、この版数はコピーのチカラに違いない……でした。北村先生の紹介には「とらえ所のない不安感」とか「濃い霧の中を進むような印象」とあり、たしかにそのとおりだったのですが、その過半は迷翻訳にあるような(ごめんなさい!) フランス語が読めたらなあと痛切に思う1冊でした。

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